- 共布とはなんのこと?どんな意味があるの?
- 『かけはぎ』は共布がないとできない?
- 共布は切れ端とは別のもの?
『共布』という言葉は、洋服和服のどちらにも使われますが、聞いたことがない方もいるかもしれません。
スーツで使われる『共布』は『補修布』とも言われ、日常的に使うものではなく補修のときに使う布のことです。
この記事では、スーツ・ビジネススーツの「破れ」「虫食い」などの修理に使う共布について、修理の実例や共布を無くしたときの対応など、くわしく解説します。
実際の修理手順についてはこちら≫破れの修理方法で解説していますので参考にしてください。
共布とは
共布の読み方は『ともぬの』で、一般的には『製品と同じ生地のもの』のことを意味します。
ファッション業界では、「共布のベルト」や「共布の持ち手」などあらゆるシーンで使われる言葉です。
では、スーツの場合に『共布』といったらどのようなものでしょうか。
スーツでの共布とは
- 付属の布切れのことを、スーツでは『共布』という
- 小さな破れや虫食いの穴を修理する時に使用する
「ズボンのポケットについている布」「小さな袋に入った布きれ」と説明されることもある共布。
一般的にはボタンとセットになって袋に入っています。
スーツだけではなく、コートやシャツ、カジュアルパンツなどでも付属していることがあるため、一度は目にしたことがあるはずです。
すぐに使うものではないので、つい捨ててしまいそうになるかもしれません。
でも、捨てるのは待ってください!
共布もボタンも、きれいに修理するためには必要です。
長く大切に着るために、捨てずに保管しておきましょう。
切れ端も共布として使える
- 切れ端とは、一般的に裾上げや縫製で余った布のこと
- 付属の共布で足りない場合や、うまく柄がとれない時に使える
裾上げをした時の生地が製品と一緒に袋に入っていたり、『持ち帰りますか?』と聞かれた経験のある方もいるかもしれません。
切れ端と言われる余った生地も、補修布としてスーツの修理に使う事ができるので、大切なスーツの場合は切れ端もとっておくと後々よいかもしれません。
付属の共布で足りない場合や、共布では必要な柄部分の生地が十分にとれないことがあるので、長く大切に着たいと考える場合は保管しておくことをオススメします。
長く着用する和服は切れ端も保管しておくことが一般的です。
共布を使った修理
スーツと同じ生地を使って修理と言われてもイメージしにくいかもしれません。
修理方法は虫食いの修理で解説していますが、どのように修理するか簡単に解説します。
共布を使った修理は、おもて側から繊維を折りこむ方法と、うら側から接着する方法があります。
どちらの方法も、全く同じ色柄の生地を使うことで目立たずに修理することができるのです。
共布を使った修理『かけはぎ(かけつぎ)』とは
かけはぎとは、共布をおもて側から織り込んで衣類を修理する伝統的な方法です。
フォーマルシーンで着るスーツでも影響がないほどキレイに直すことができ、一般的に採用されている方法ですが、技術が必要です。
自分でかけはぎをすることは非常に難易度が高く、専門店ほどの仕上がりにすることは至難の業(不可能に近い)といえます。
自分でする場合、多少修理のあとが残ることを踏まえて取り組みましょう。
かけはぎ(共布がない場合)
- かけはぎは、共布がない場合は修理できないのでしょうか?
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スーツ(ズボン)の見えない場所から裁断して、共布の代用とする方法で修理できることがあります。
裾や袖の折り返し部分・ポケットの内側など、表面から見えない場所の生地を切り抜いて共布の代用として使うことができます。
この方法には、破れ・穴の大きさが重要です。
一般的なかけはぎには、ごく小さな穴であっても5~6㎝四方の生地が必要になるため、破れや穴によっては生地サイズがとれないことがあります。
大きく生地が必要だからといって、写真のように裾や袖口のギリギリまで切ってしまうのはNGです。
ほつれ止めの処理が難しく見栄えも悪くなるため、裾・袖口から2㎝以上の生地を残してカットすることが理想的です。
自分での修理が難しいと判断した場合は、衣類をカットする前にお直し業を行う専門業者に依頼したほうがいいでしょう。
共布の代用のための生地のカットは慎重に判断しましょう。
裁断した生地で修理する場合の注意点
- 裁断した場所に代わりの生地を足し縫い留めるため、手間がかかる
- 必要な生地サイズによっては、修理に必要な生地を確保できず修理ができないことがある
共布を切った後の処理
修理用に布を切りだしたあとをそのままにしておくと、ほつれて生地が落ちてきますし、肌にも引っ掛かります。
必ず代わりの布(補修布)を、ミシンや千鳥がけで縫い付けて、ほつれないようにしましょう。
千鳥がけ(千鳥縫い)
千鳥がけで補修布を縫い付ける手順
カットしたスーツ・衣類に補修布を取り付ける手順を解説します。
ほつれないように固定ができれば他の方法でも問題ありません。修理の参考にしてください。
糸が出ていたらカットし、できるだけ真っすぐに切ります
写真の補修布は上部を折っていますが、厚みがでるようなら折らずにミシン処理をします
おもて側からは縫い目は見えません
折り返し部分の生地だけを縫っています
おもて側の生地に縫い留めます
まつり縫いなどで縫ってもかまいません
糸を使ったかけはぎ(共布がない場合)
- スーツの虫食いは共布がない・スーツを切りたくない場合は修理できないのでしょうか
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スーツの目立たない部分の繊維の糸を部分的に抜き、補修部分に織り込む方法があります
破れと虫食いの修理方法は基本的には同じですが、穴が小さく生地の傷みが少ない「虫食い」は、繊維の糸を使って自分でも修理ができます。
この方法にも条件があり、虫食いのように修理する箇所が小さいことが重要なポイントです。
虫食い穴で解説していますが、ウールなど厚手のスーツは繊維の糸が太く作業しやすいのですが、薄手の生地では非常に難しくなることにも注意が必要です。
繊維の糸で修理する場合の注意点
- 厚手のスーツは繊維の糸が太く作業しやすいが、薄手の生地では非常に難しい
- 虫食い以外の修理では難易度が高い
繊維の糸を抜いた後の処理
この作業をする場合、糸を抜いたスーツ・衣類をそのままにしておいてはいけません。
糸が切れている部分は縫い留めたり、ほつれ止め液を使い、糸の飛び出しやほつれを防止できるように処理をします。
共布はできる限り保管を
スーツの共布は破れ・虫食いなどの穴を修理するには欠かせないものです。
一般的にボタンとセットで小袋に入った状態で付属されていますが、保管されているでしょうか。
- 一般的には『製品と同じ生地のもの』を意味する
- スーツの場合は『スーツと同じ生地の布きれ』を意味する
- 修理・補修の時に必要になる
- 共布がない場合でも修理できることがある
スーツの見えない部分からの生地の流用はできますが、あまりオススメはできません。
やはり共布とボタンはできる限り保管しておきましょう。
小さな破れや虫食いだけでスーツを買い替えることは、持続可能な社会を目指すこれからの時代に合わないと思いませんか?
大切なスーツを、お直ししながら長く着ることをめざしていきましょう。