- サイドベンツやセンターベントって何のこと?
- サイドベンツとセンターベントで印象は変わる?
- 着心地がいいのはサイドベンツとセンターベントのどちら?
スーツのシルエットや着心地に影響がある「サイドベンツ」や「センターベント」という言葉があるのですが、目にしたことはありますか?
ベントとはジャケットの裾の部分に入った切れ込みのことで、位置によって「サイドベンツ」や「センターベント」と呼ばれています。
この記事では、サイドベンツとセンターベントについて、それぞれの特徴と選び方のポイントを解説していきます。
サイドベンツやセンターベントを入れることによって、見た目や着心地に差が生まれるのでスーツ選びの参考にしてください。
サイドベンツとセンターベントの違い
サイドベンツとセンターベントの違いは、ベンツと呼ばれる切れ込みの位置と数です。
ベンツはスリットのような切れ込みですが、切れ込み部分の布が重なっていないものがスリット、重なりがあるものがベントになります。
また、ベントの中には伏せ縫いを使用したフックベントというものもあります。
フックベントはセンターベントの一種で、フック(鉤)の形に見えるのが特徴です。フックベントについては別記事で紹介しておりますので、ぜひあわせてご覧ください。
サイドベンツは左右にベントが入っている
スーツの背中側の部分に、左右2か所切れ込みが入った形を「サイドベンツ」と呼びます。切れ込みが複数なので「ベント(vent)」ではなく複数形の「ベンツ(vents)」です。
2か所の切り込みがそれぞれ広がるので、筋肉質な人や太めの体形の人もスーツのシルエットを崩すことなく着ることができます。
また、ベンツが1か所のセンターベントよりもゆとりがあり、大きく動いても窮屈さを感じにくいというメリットがあります。
センターベントは背中に1か所だけ
スーツの背面中央に1か所だけ切り込みが入ったものを「センターベント」と呼びます。切れ込みが1か所だけなので裾があまり広がらず、サイドベンツより細身のシルエットになります。
タイトでスタイリッシュに見えますが、太めの人は動いたときに窮屈に感じたり、ベントが広がりすぎて中に着ているシャツが見えてしまうことがあります。
成り立ちによるサイドベンツとセンターベントの違い
サイドベンツとセンターベントのデザインは、単純に切れ込みを1か所にしたものと2か所にしたものを作ったわけではありません。
ベントの位置や数の違いは、全く違う使用目的だったために生まれたのです。
サイドベンツは騎士が着用しやすい工夫
サイドベンツは、日本では「剣吊り」と呼ぶこともあります。騎士たちが腰に下げていた剣が邪魔にならないように裾に切れ込みを入れたのが始まりと言われています。
剣の鞘をサイドにあるベントから出すことで、剣を付けた上からもジャケットを着用できるようになっているのが特徴です。
センターベントは乗馬で足を開くため
センターベントの成り立ちは乗馬服からです。スーツのジャケットは、もともとはモーニングコートやフロックコートという丈の長い上着でした。
丈の長い上着では馬に乗るとき邪魔になるため裾を短くし、さらに、足が開くのを邪魔しないように背中に切れ込みを入れたものがセンターベントです。
そのため、日本では「馬乗り」と呼ばれることもあります。
シルエットに着目してサイドベンツかセンターベントを選ぶ
ベンツの数がセンターベントよりも多いサイドベンツは、センターベントよりも裾周りに余裕ができるため、ややゆったりとしたシルエットになります。
逆にセンターベントはサイドベンツよりも細身のシルエットになり、すっきりとした印象を与えることができます。
サイドベンツはエレガントに見える
ゆったり目のシルエットになるサイドベンツのジャケットには、細身のパンツを合わせてしまうと上半身がふくらんで見えてバランスが悪くなってしまいます。
そのため、スーツの場合はパンツもタックが入ったゆとりのあるものを選ぶのがおすすめです。上下ともにゆとりのあるシルエットのスーツは、大人っぽくエレガントな雰囲気になります。
サイドベンツの切れ込みは、腰のあたりにゆとりが出るように入れるときれいに見えるため、ジャケットの丈はやや長めでも大丈夫です。
落ち着いた雰囲気に見せたいときや、相手に安心感を与えたいときもサイドベンツのスーツが向いています。
センターベントはややタイトなシルエット
センターベントは切れ込みが1か所しかないので、サイドベンツと比べてスリムなデザインになっており、おしゃれでスタイリッシュな印象を与えることができます。
スーツとして着用する場合は、パンツもタックがあまり入っていない細身のものが似合うでしょう。
センターベントは細身なので、丈が長いと間延びして貧弱なシルエットになってしまいます。短めの丈ですっきり着るのがおすすめです。
別記事のツータック・ワンタック・ノータックとはでは、パンツのタックの種類や特徴について詳しく解説しております。
サイドベンツやセンターベントのシルエットに合わせてパンツを選ぶときは、ぜひそちらの記事もあわせてご覧ください。
着心地を重視してサイドベンツかセンターベントを選ぶ
ジャケットの裾の切れ込みは、見た目だけでなく動きやすさにも関係してきます。切れ込みが2か所の場合は、1か所の場合と比べて倍の範囲が開くため、かなり動きやすくなります。
サイドベンツはゆとりがあり動きやすい
サイドベンツは切れ込みが1か所のみのセンターベントと比べて、動いたときに感じる窮屈さが少なくなっています。
私服でいつもゆったり目の服を着ているという場合は、センターベントは圧迫されたようで着心地が悪いと感じる可能性があります。ゆとりのある着心地が好みの場合はサイドベンツのスーツを選びましょう。
また、サイドベンツはセンターベントと比べて動きやすいので、立ったりしゃがんだりという動きが多い仕事の場合は、サイドベンツを着用したほうが楽に過ごせます。
腰回りが広めの人やマッチョな人も、サイドベンツのスーツなら動きにくさを感じずに着ることができるので、サイドベンツのほうがおすすめです。
センターベントはフィット感がある着心地
センターベントは1か所しか切込みがないため、サイドベンツと比べると動きの自由さが制限されます。ただ、普段から体にフィットした服装を好む人の場合は、程よいフィット感のあるセンターベントの方が着心地がいいと感じるでしょう。
また、細身な人の場合はサイドベンツではゆとりがありすぎて、余った生地がバサバサして動きにくく感じてしまうこともあります。幅が広ければ動きやすというわけではないので、自分の体形に合ったものを選んでください
サイドベンツとセンターベントに関するQ&A
- サイドベンツの着丈はどのくらいがいいでしょうか?
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サイドベンツは短すぎると腰より上の位置でベントが広がってしまい、きれいなシルエットが出ません。着丈がやや長めのほうがバランスよく見えるので、お尻が隠れる程度を目安にするといいでしょう。
- 喪服でも背中に切れ込みが入っていても大丈夫ですか?
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礼服は着心地が重視されていなかったためノーベントのものが多いだけで、喪服にベントが入っていてもマナー違反ではありません。
自分の体形や好みの着心地に合わせたものを選んでください。
サイドベンツとセンターベントは特徴を考慮して選ぼう!
サイドベンツとセンターベントの違いはベントと呼ばれるジャケットの裾に入った切れ込みで、サイドベンツは左右に1か所ずつの合計2か所、センターベントは中央に1か所入っています。
サイドベンツとセンターベンは切込みを入れるようになった歴史にも違いがあり、成り立ちからサイドベンツは「剣吊り」、センターベントは「馬乗り」と呼ばれることもあります。
- ベンツとは裾の切れ目のことでサイドベンツは両脇に、センターベントは中央に入っている
- サイドベンツはエレガントな雰囲気でセンターベントはスタイリッシュに見える
- サイドベンツはゆったりとした着心地でセンターベントはフィット感がある
サイドベンツとセンターベントは見た目だけでなく着心地にも違いがあるので、それぞれの特徴を考えて着やすいものを選びましょう。
GINZA SAKAEYAの仮縫付フルオーダーでは、仮縫をすることによって出来上がり前にシルエットを確認することができます。デザインや着心地でお悩みのときはぜひご相談ください。
ベント以外に襟の形やボタンの数でもスーツの印象は変わってきます。スーツの着こなしに関しては、別記事のスーツの着こなしについてで詳しく紹介しておりますので、ぜひそちらも参考にしていただければと思います。