- モーニングコートの特徴は?いつ着るの?
- 「モーニング」と「モーニングコート」は同じもの?
- 結婚式で着るモーニングコートにはコーディネートに決まりがある?
モーニングコートは、通称『モーニング』と言われる礼装のことですが、普段着用する機会がほとんどなく「ルール」や「マナー」が分かりにくいものです。
この記事では、そんな一般市民にとってやや縁遠い存在であるモーニングコートについてくわしく解説します。
モーニングコートは礼装の中でも「正礼装」と言われる格調高いフォーマルスーツであり、国際的な行事にも着用されています。
燕尾服とデザインが似ていますが、着用ルールは全くことなることも注意するポイントです。
シーン別の装いルール・マナーや他のフォーマルスーツとの見分け方など、わかりやすく解説するので、ぜひモーニングコート着用の参考にしてください。
モーニングコートとは
モーニングコートとは『モーニング』『モーニングスーツ』とも呼ばれるフォーマルスーツのことで、防寒のために羽織るコートのことではありません。
昼の礼装として国際プロトコール(国際儀礼に着られる衣類)に定められており、昼間に着用する最上級の正礼装にあたります。
他の礼装である燕尾服やタキシードとは着用する時間帯や格式が変わってくるので、しっかり着分けるためにモーニングコートの歴史や特性を解説します。
「モーニング」は「スーツ」とは違う!特徴を解説
「モーニング」と「スーツ」は礼服としての格式も違いますが、上着の形状が大きく異なります。
モーニングのように裾の長い上着を『コート』、スーツやタキシードのように裾が短い上着を『ジャケット』と呼び区別しています。
裾の長い『コート』は、1700年代に誕生したといわれるスカーテッドコートの形状を引き継いだもので、1800年代後半までは男性のスタンダードでした。
裾が短い『ジャケット』は、1800年代後半に動きやすさを重視したラウンジスーツ(=タキシード)として誕生し、アメリカで現在のスーツの形状になっていきました。
こういった、丈の長い『コート』が『ジャケット』の起源になったという歴史があり『コート』は『ジャケット』よりも伝統的で格式が高いものとされています。
同じ『コート』として分けられている燕尾服(=テール・コート)とモーニングはよく似たデザインではありますが、襟元の素材・腰回りのカットなどに違いがあるので、注意深く見ると見分けることができます。
モーニングは英語?意味や歴史を解説
モーニングの英語読みや意味を解説します。
英語
- モーニング・コート(morning coat)
- モーニング・ドレス(morning dress)
- カット・アウェイ・フロックコート(cutaway frock coat)
日本での呼び名
- モーニング・スーツ(morning suit)
- モーニング(morning)
モーニングは英語でも「モーニング・コート(morning coat)」と呼ばれますが、英語本来のmorning coatは上着(コート)だけを意味しています。
他にも「モーニング・ドレス(morning dress)」やカットされたフロックコートという意味の「カット・アウェイ・フロックコート(cutaway frock coat)」とも呼ばれています。
モーニングコート特有の大きく斜めにカットされたフロント部分は、乗馬の邪魔にならないようフロックコートを改良して誕生したとされており「カット・アウェイ・フロックコート」と呼ばれていました。
次第に「モーニング・コート」と呼ばれるようになりましたが、どちらも正しい呼び方です。
1810年頃:丈の長いフロックコート登場
1825年頃:乗馬しやすいようフロックコートのフロント部分を切り取ったデザインが登場
1870年頃:「カット・アウェイ・フロックコート」から「モーニング」と呼ばれるようになる
1880年頃:フロックコートに代わってモーニングコートが多く着られるようになる
1914年:第一次世界大戦を機に、モーニングコートが礼装として認識される
1921年:博覧会で出品され、日本でもモーニングコートが広まる
フロックコートとは
19世紀~20世紀ごろに着られていた正装。
ダブルブレストで黒色、着丈が膝程度まである裾の長い上着(コート)が正式なものとされ、日本人も幕末~明治頃に着ている写真が多く残っている。
近年は、シングルブレストやショートフロックコートといったものもあり、ロングタキシードと同じく結婚式の「衣装」としてしばしば着られている。
日本では「モーニング・スーツ(morning suit)」「モーニング(morning)」とも呼ばれることもあり、多くの呼び名があることもモーニングコートの一つの特徴です。
着用するのはどんな時?
モーニングコートは葬式(弔事)にも、慶事にも着用できることが他の正礼装とは異なります
礼装には着用シーンがある程度決まっているものですが、正礼装であるモーニングコートはどのような場合に着るものなのでしょうか。
モーニングコートは慶事・弔事のどちらにも着用されることが特徴で、実際に着られるのは
慶事(祝い事)
- 国家主催の式典
- 皇室主催の園遊会
- 叙勲の授賞式に出席する方
- 公式(会社主催)のパーティー・レセプション
- 記念式典(地鎮祭・竣工式)
- 結婚式・披露宴の新郎、新郎新婦の父親
- 入学式・卒業式の代表者
- 馬術競技(競技用)
弔事(お悔やみ事)
- 葬儀(公式の葬儀)
- 告別式
- 一周忌法要
- お別れの会
- 偲ぶ会
※喪主や親族など主となる側が着ることが一般的だが、通夜や3回忌以降には着用NG
などで、国家主催の式典や伝統的な行事、相手に敬意や慈しみの気持ちを示すシーンです。
なぜモーニングコートを着用するのか、次の章でくわしく解説します。
モーニングコートはいつ着るのが正解か
モーニングコートをいつ着るかは、フォーマルウェア(礼装)の基本ルールを守ったうえで判断するべきです。
フォーマルウェアとは、あらたまった場でシーンに応じて着分ける衣装のことです。
着る人の“たしなみ”として恥をかかないように選ぶことも大切ですが、相手(主催者)や出会う人すべてに対して敬意やおもてなし、または慈しみの心を伝えるための手段にもなることを認識しておきましょう。
モーニングは昼の正装・礼装
- モーニングは正装で、メンズフォーマルの中では燕尾服に続いて”格の高い”もの
- 昼の礼装であり、正式には朝~昼(18時まで)に着用する
モーニングコートは、もともと「朝の散歩服」とされたもので、その名の通り昼(朝)に着るための礼装です。
夜の礼装である燕尾服やタキシードとは違い、光沢のある生地を使わず、拝絹(ハイケン)地や側章もありません。
昼と夜の礼装の違いは燕尾服とモーニングの違いでくわしく解説しています。
昼の礼装であるモーニングコートですが、日本では新内閣発足認証式など夜間の行事でも着られています。
もともと和服には時間帯で衣類を分けるという習慣がなく、礼装が広まった明治初期に誤って認識された経緯があり、その名残で日本では時間帯を問わずモーニングを着用することがあります。
モーニングは結婚式では『衣装』に近い位置づけ
モーニングは結婚式の新郎や父親によく着られますが、『衣装』として認識され、時間帯やルールに縛られずに着用することもあります。
くわしくはタキシードを結婚式で着るルールで解説しているので参考にしてください。
新郎の場合
新郎が結婚式の礼服を選ぶとき
- 結婚式・披露宴の“格”
- 時間帯
- 場所
- 同伴者(パートナー)との服装のバランス
などを考慮して決めます。
結婚披露宴は日中が多いこと、規模に限らず結婚式の「衣装」としてスタンダードな装いであることなどから、ごく一般的にモーニングコートが選ばれています。
通常は、黒の上着・黒orシルバーのベスト・コールズボンですが、全ての色を黒にしたモーニングコートや全ての色をシルバーグレーにした『アスコットモーニング』は新郎用として人気があります。
新郎・新婦の父親の場合
父親はモーニングコートを着用することが慣例化しています。
結婚が個人の自由となった現代においても、新郎新婦の父親は『主催者』としてゲストや来賓に対して失礼のない(格式の高い)服装をするべきとされ、モーニングコートが選ばれています。
黒の上着・ベスト(シルバーの場合もある)にコールズボン(白黒の縞ズボン)といったスタンダードな装いであることが一般的です。
本来であれば、新郎より”格”をやや落とすか同等の礼装であるべきですが、モーニングコートを着用することで新郎より格上になっていることがあります。
慣例で選ぶことも否定はしませんが、礼装のマナーに添い、新郎とのバランスを考えた着分けも検討してみましょう。
燕尾服・タキシードとの違いとは
モーニングコート、燕尾服、タキシードは正礼装です。
国際的な行事にも着られる格式の高い礼服ですが、普段着ることが少ないためルールやマナーはあいまいに覚えられていることがあります。
それぞれの礼装で
- 着用シーン
- 着用するべき時間帯
- 格の違い
などが変わるのですが、コーディネートや着合わせの自由度にも違いがあります。
くわしくは燕尾服とタキシード、モーニングの違いを参考にしてください。
モーニングの着方とは?
モーニングの着方、基本のマナーについて
- モーニングコート・ベスト・コールズボン(縞ズボン)がセット
- 慶事と弔事で、ベスト・ネクタイが変わる
- ベスト・シャツ・ネクタイ・小物に選択肢があり、ルール内で選ぶことができる
- 裾はお尻に敷かずに座る
モーニングコートの基本の着こなしを解説します。
裾の処理や着用マナーは燕尾服の着方・マナーも参考にしてください。
モーニングのシャツ・ネクタイなど基本のアイテムを解説
モーニングのシャツ(ワイシャツ)・ネクタイ(結び方)・靴などには選択肢がありますが、決まったパターンから選ぶことがマナーとされ、アレンジや着崩しはマナー違反です。
シャツ
- 白無地のスティッフブザムシャツ(別名:燕尾服シャツ・イカ胸シャツ)orプレスの効いた一般的なシャツ
- 襟元は正式にはウィングカラーだが、ダブルカラーでもOK
- 手元はダブルカフスがよりドレッシー(シングルカフスでもOK)
ベスト(ウエストコート)
- 共布(黒)orシルバーグレーorのアイボリーのベスト(国際的には淡いブルーが一般的)
- 共布の場合に限り、白襟(しろべり)をつけることもある
- 弔事では共布(黒)のベスト
ネクタイ
- 白黒の縞柄orシルバーの無地・織柄orシルバー系×黒の柄物のネクタイ
結び方は『結び下げ』 - 結婚式の新郎はアイコットタイでもOK
- 弔事では黒の結び下げ
ポケットチーフ
- 白い麻素材のポケットチーフを使用する
靴・靴下
- 靴は黒のストレートチップが基本
- 靴下は黒い薄手のハイソックス(以前は白黒の縞模様がよく着用され、現在でも着用OK)
カフスボタン(宝石類)
- パール・銀・ゴールド・その他の宝石つきのタイピンやカフスリンクスを使ってもOK
- 弔事では色のある装飾品は使わない
手袋
- グレーor白の革製で、手に持つだけのスタイルが一般的
- 弔事では黒orグレーの革製
帽子
- 帽子をかぶる場合は黒のシルクハット
モーニングのボタンマナーとは
モーニングのボタンはフロント部分に1つ付いており、留め方が慶事と弔事で変わるので注意が必要です。
- 慶事:内ボタンを使った『拝み合わせ』で留める
- 弔事:外ボタンを使って重ねて留める(一般的なスーツの留め方)
くわしい解説は礼装のボタンマナーで確認してください。
モーニングコートはレンタルの品揃えが豊富
モーニングコートはレンタルが多く、結婚式の父親や新郎が着る場合もレンタルが一般的です。
よく流通するためレンタルとしての品揃えも豊富ですが、あらゆる体形の人に合うようにややゆったりとしたシルエットであることが多く、やせ型の人にはサイズ感が合わないこともあります。
体の大きい人や特殊体型の人にはレンタルでは難しい場合もあるため、結婚式に限らず、卒業式や式典などで着用する機会のある方は、ぜひ購入(オーダー)もご検討ください。
GINZA SAKAEYAのオーダータキシードがおすすめ
モーニングコートをオーダーで作るとどのようなメリットがあるのでしょうか。
- 既製品やレンタルのモーニングコートではスマートに見えない
- コーディネートを考えるのが難しい
GINZA SAKAEYAのフルオーダーモーニングコートは、
- 素材
- シルエット
- デザイン
- カフス・ボタン
などを選び、体に合わせて作る正統派オーダーモーニングコートです。
ニーズに合わせて、様々なシーンで着用できるようベストやネクタイのスタイリングもあわせて提案することが可能です。
モーニングコートの着こなし方やルールを知り尽くしたGINZA SAKAEYAでは、品格を引き出し、よりスマートに見せるモーニングコートの相談ができます。
厳選されたウールを使用したCloth Ermenegildo Zegna生地で作るモーニングコートは、最上級クラスの品質でありながら、お求めやすい価格であることもオススメのポイントです。
GINZA SAKAEYAのオーダーモーニングコートプライス
モーニングコート253,000円(+税)〜
※黒ジャケット+黒ベスト+コールパンツ
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モーニングコートはおしゃれのために着るものではない
モーニングコートはおしゃれを楽しむために着るものではありません。
正礼装であるモーニングコートやフォーマルスーツは、礼儀として着ることが決められているものであり、ルールとマナーを守って着用することがなによりも大切です。
- 燕尾服に続いて格式の高いフォーマルスーツ
- 基本的に昼の正礼装(~18:00)
- 慶事・弔事に着用できるがネクタイやベストを変える必要がある
- モーニングコート・ベスト・コールズボン(縞ズボン)がセット
- ベストやネクタイに選択肢があり、ルール内でコーディネートできる
- 結婚式では、新郎はコートとパンツが同一色のものを着ることが多い
モーニングコートは、燕尾服ほど厳格ではなく、タキシードほどカジュアルなコーディネートが許されたものではありません。
判断が難しいときは、信頼できるマナーBOOKやホームページで確認したり、相談できる店舗を利用することもおすすめです。
ルール、マナーを守りながら、モーニングコートで非日常の装いを楽しみましょう。