- ウーステッドとは何?特徴や注意点があるなら教えて!
- ウーステッドとフランネルは何が違うの?
- ウーステッドは洗濯しても大丈夫?
高級スーツや一般的な服に使われることが多いウール素材。
ひと口にウールと言ってもウーステッドやミルドウーステッド、ウーレンにフランネルなど呼び方が異なるさまざまな生地が存在します。
名称はそれぞれ耳にしたことがあっても、何が違うのか、どんな特徴があるのかを明確に理解している人は少ないのではないでしょうか。
今回は、スーツ生地に使われることが多い”ウーステッド”の特徴や注意点と共に、その他のウールを原料とした生地との違いについて解説します。
この機会にウーステッド生地の特徴や注意点を知って、スーツを仕立てるときや購入する際の参考に役立ててください。
ウーステッドとはウール素材で作られた生地の1種
ウーステッドは、スーツに使われることが多いウール(羊毛)を原料とした生地の1種です。
高級スーツは「化学繊維ではなく天然素材を原料としたウールが用いられる」と言われますが、スーツなのにウールが使われることに違和感を感じていた人もいるのではないでしょうか。
確かに身近なウール製品と言えば、モコモコで温かいセーターや掛け布団などに使われていることが多く、スーツの生地には不向きなイメージを抱いても不思議ではありません。
- ウーステッド
- ウーレン(ウールン)
- フランネル
- フラノ
実は、上記の生地はすべて「原料がウール(羊毛)」という共通点を持っているため、大きなカテゴリで分類すればウール素材ということになります。
それぞれの生地がどんな特徴を持ち、なぜ異なる質感になるのかを詳しく解説していきます。
ウーステッドは梳毛(そもう)を原料とした生地
ウーステッドとは、梳毛(そもう)で作った糸で織られた生地の総称です。
梳毛という言葉は聞きなれない人が多いと思いますが、すごく簡単に説明すると「長い毛を櫛で綺麗にとかした毛」という意味になります。
ウールの原料となる羊毛が取れる羊は、あまり知られていませんが以下のような種類に分類されていて、一般的には細く長い羊毛ほど高品質で希少価値が高くなっています。
- 毛の長さによる分類・・・長毛種と短毛種に分けられる
- 毛の太さによる分類・・・細毛種、中毛種、粗毛種などに分けられる
ウーステッド生地は、長く細い羊毛のみを厳選した梳毛で紡がれた糸で織られているため、一般的なウール生地とは違う質感になっているのです。
また、ウーステッド生地と一般的なウール生地が異なる質感になる理由には、使われる糸の違いだけでなく「撚り方の強さが違う」ことも挙げられます。
細く長い梳毛を強く撚ることで作られたウーステッドは、ウールを原料としていながらも滑らかで丈夫な質感という特徴を持った生地になっています。
一般的なウール衣料は、紡毛と呼ばれる原料を使っているという違いだけでなく、上図のように基本的に「撚りが甘い」という特徴を持っています。
撚りが甘いことがダメな訳では無く、この特徴が独特のふんわりした質感を生み出しているのです。
撚りが強くスーツに最適とされるウーステッド生地はどのような特徴を持っているのでしょうか。
梳毛については詳しくは別記事で解説しているので参考にしてみてください。
ウーステッド生地の特徴とは
セーターやマフラーのイメージが強いウールですが、梳毛を強く撚って作られたウーステッド生地はスーツに適したさまざまな特徴を持っています。
ウーステッド生地は薄くて軽い
梳毛が使われたウーステッド生地は、薄くしなやかな仕上がりで比較的軽いという特徴があります。
ウールを原料としていることから、秋~冬に適した生地だと思われがちですが、オールシーズンに対応した万能生地だと言えるでしょう。
織り目が出やすくシワになりにくい
ウーステッド生地は、コシが強く張りがあるためスーツの印象を決定づける織り目が綺麗に出やすいという特徴を持っています。
シワにも強く、仮に型崩れやシワになってしまった場合でも、適度な湿気を与えて陰干しするだけで元の形状に戻ろうとする性質もあるのです。
手触りの良さと美しい光沢をもつウーステッド生地
ウーステッド生地が高級スーツに用いられることが多い理由として、美しい光沢となめらかな手触りを持つという特徴が挙げられます。
汗汚れやニオイに強い
原料となるウールが持つ防汚性と防臭性は、ウーステッド生地でもしっかりと発揮されます。
ウール繊維に含まれるたんぱく質には”アミノ基”や”カルボキシル基”と呼ばれる、汗やアンモニアと反応して消臭効果を発揮する物質が存在します。
いわば天然の消臭機能を持っているため、ウーステッド生地で仕立てられたスーツは汗やニオイに強くなるのです。
ウーレンは紡毛(ぼうもう)を原料とした生地
ウーレン(ウールンと呼称されることもあるが同じ生地を指す)は、梳毛ではなく紡毛から作られた糸で織られた生地を意味します。
紡毛とは同じ羊毛でも「短い毛や太い毛」を一度ひとまとめにしてから、引き伸ばして糸にしたものになります。
梳毛で作られたウーステッドに比べて、ウーレン生地は「起毛した質感」が特徴的で毛糸を思い浮かべるとイメージしやすいのではないでしょうか。
撚り方が甘いこともあり、粗さや表面が毛羽立っているという特徴を持つウーレン生地ですが、前述の通り生地としてウーステッドに劣っている訳ではありません。
ウーレン生地の特徴
- 柔らかい
- ボリュームの割に軽い
- 保温性に優れている
- 起毛しやすい(毛玉が目立ちにくい)
ふんわりと撚っているからこそ、ウーレン生地は柔らかく軽い上に高い保温性を持つという特徴を持ち、セーターやマフラーなど防寒目的の衣服と相性のよい生地となっています。
フランネル・フラノ・ネルは同じ意味をもつ言葉
ウールを使った生地は、基本的に梳毛を使ったウーステッドと紡毛を使ったウーレンの2種類に分類されます。
フランネル・ネル・フラノという言葉は、【紡毛を使い、平織や綾織りされた毛織物全般】と定義するのが一般的です。
フランネル生地の質感は、ネルシャツなどを思い浮かべるとイメージしやすいかもしれません。
しかし表面に起毛加工がされた柔らかな織物全般をフランネルと呼称することがあり、ウールではなくコットン(綿)を素材としたフランネル生地も存在します。
そのため、綿を素材としたフランネルを「綿ネル」、ウールを素材としたフランネルを「本ネル」と区別して呼ばれる場合もあるので混同しないように注意しましょう。
フラノもフランネルの別称で同じ意味として使われます。
ミルドウーステッドはフラノ風のスーツ生地
主に秋冬用のスーツやコートを前述のフラノが持つような柔らかで表面に毛羽のある生地で仕立てたいときは、ミルド加工されたウーステッド生地がおすすめです。
ミルド加工やミルド仕立てと呼ばれる手法は、生地表面に短く細かい毛羽を意図的に残す生地の仕上げ方で、フラノ生地のような暖かみのある質感が特徴となっています。
ミルド加工されたウーステッド生地は、表面の毛羽具合によって
- ミルドウーステッド(毛羽感の強い質感)
- ハーフミルド(やや抑えめの毛羽感)
- クォーターミルド(控えめな毛羽感)
上記のように呼び分けることもあります。
特徴的な生地の見た目から、質感や手触りを心配するかもしれませんがミルド加工はあくまでも「表面に短く細い毛羽感」を出しているだけなので、ウーステッドの良さである手触りやなめらかな質感が損なわれることはありません。
ウーステッドやミルドウーステッドは洗濯できる?
スーツ生地に適したウーステッドやミルドウーステッドですが、ウールを原料としていることから「縮むのでは?」と心配する人もいるのではないでしょうか。
結論から言えば、ミルド加工の有無に関わらずウーステッド生地は洗濯することは可能ですが、スーツやコートの場合は専門のクリーニング店に任せるのが最善の方法となります。
ウール生地の衣服は洗濯するときに注意が必要であることは良く知られていますが、実はウーステッド生地は一般的なウーレンに比べると「水や熱に強い」という特徴を持っています。
紡毛で作られたウール生地の衣服は、水に濡れた状態で擦れると繊維同士が絡み合って硬くなる「フェルト収縮」という現象が起こります。
このフェルト収縮は梳毛ではほとんど起こりません。
その一方で、ウーステッド生地が使われるスーツやコートは「型崩れが大きな問題となる衣類」であることが多く、洗濯機で洗うのが難しいという問題を抱えています。
フェルト収縮により生地が硬くなったり縮んだりする心配は少ないですが、型崩れが起きたり織り目が無くなってしまうなどのリスクを考えると、クリーニングに任せた方が無難です。
特にハイブランドの衣類や高級スーツを洗うときは、通常のクリーニング店ではなくハイブランド専門のクリーニング店がおすすめです。
スーツをクリーニングするときの注意点やお店の選び方について、詳しく解説している記事がありますので気になる方は合わせて是非目を通してみてください。
ウーステッド生地でも最上級と評される「ゼニア生地」
スーツ地に最適な梳毛を使ったウーステッド生地は、原料となる羊毛の品質によって価値や仕上がりが大きく異なります。
中でも世界的に有名なスーツブランド「ゼニア」の生地は最高品質と評され、エルメスやアルマーニなど日本でも有名なハイブランドにも生地を卸していることで有名です。
梳毛に使われる羊毛はただでさえ長く細い毛だけを厳選して使われますが、ゼニアの生地は最も珍重される”メリノ種”を自社の所有する牧場で育て、厳しい査定に合格した毛だけを使用するという徹底ぶりで知られています。
ゼニアが製造するスーツ生地には数多くのラインナップがあり、そのどれもが一般的なスーツ生地と比較するとスーツ初心者でも明確に差が判るほど手触りや光沢に優れた品質となっています。
スーツを恒常的に着用するビジネスマンにとって、高級スーツに袖を通すことは憧れの1つだと思います。
世界でもトップクラスのスーツブランドであるゼニアでスーツを仕立てた場合、安くとも50万円~と決して気軽に購入できるスーツではないのも確かです。
当店GINZA SAKAEYAは、日本でも限られた「ゼニア認定店舗」としてゼニア生地を専門的に扱うテーラーで、ゼニアに認められた確かな縫製技術でゼニアスーツを最低価格90,000円~(税別)という金額でお仕立てすることが可能となっています。
最高の着心地を実現する仮縫い付フルオーダーでも110,000円~(税別)で、ゼニアスーツをこの価格で提供できるのは日本国内においては当店だけです。
ウーステッド生地が使われたスーツは、化学繊維を使った一般的なスーツに比べると高くなります。
せっかく高いお金を払ってウーステッド生地のスーツを仕立てるのであれば、予算を少しだけ奮発して最高品質のスーツを仕立てることを検討してみてはいかがでしょうか。
オーダースーツについて詳しく解説した記事を読むと、相場やオーダーシステムの違いがよく判るのでおすすめです。
ウーステッド生地で素敵なスーツやコートを仕立てよう!
ウーステッドとはウールを原料とした梳毛を使って作られた生地で、主にスーツやコートを仕立てる際に用いられます。
一般的なウール衣料(セーターなど)は紡毛を使って作られたウーレンと呼ばれる生地なので、混同しないように注意しましょう。
また、ネルシャツなどに使われるフラノ生地は柔らかな質感と毛羽のある見た目が特徴的ですが、スーツ生地には適さないので秋~冬用として毛羽のある質感のスーツを仕立てるときはミルドウーステッド生地が最適です。
- ウールにはウーステッド(梳毛生地)とウーレン(紡毛生地)の2種類がある
- 丈夫でシワやニオイに強いウーステッドはスーツ生地として最適
- ウーステッドはウーレンに比べて水や熱に強いが、スーツなどはクリーニングがおすすめ
- ウーステッド生地でも品質に差があり、高級スーツに使われる生地は希少価値が高く高品質
梳毛を使い紡毛に比べて手間のかかるウーステッド生地は、化学繊維などが使われたスーツ生地に比べれば高額(既製品でも3万円~5万円が相場)なので、購入を検討する際は後悔しないように仕立て方や生地をしっかり吟味して最高のスーツを仕立てるようにしましょう!