- 燕尾服とはどんな服?いつ着るの?
- 燕尾服の基本ルールが知りたい
- モーニング、タキシード、燕尾服…結婚式に着るのはどれ?
燕尾服とはフォーマルウェアで一番格式の高い、いわゆる『正礼装』で、私たち庶民が気軽に着用する機会はほとんどありません。
普段着ないからこそ、いざ着るとなった時にマナーが分からず困る服でもあります。
この記事では、そんな少々遠い存在である「燕尾服」をメインにフォーマルウェアを解説します。
困ったときに確認しやすいよう、分かりやすく解説するのでぜひ参考にしてください。
燕尾服とは
燕尾服とは、裾が燕の尾のようになったフォーマルスーツで、かつては夜の正礼装として普及していました。
現在でも夜の正礼装ではありますが、もっとも格式の高い礼装として、夜に限らず式典などで着用されることもあります。
特徴や着るべきシーンについて、くわしく解説します。
燕尾服をイラスト解説!後ろ姿が特徴的
燕尾服は後ろ姿が特徴的で、燕の尾のように長い裾がありますが、他にも多くの特徴があり厳格なルールが決められています。
燕尾服の主な特徴
- 燕の尾のように長い裾がある
- フロントの丈は短く、四角くカットされている
- ジャケットの衿に拝絹地(ハイケン地)がつく
- フロントに6つのボタンがある(留めない)
- スラックスには2本の側章(飾りのテープ)が付く(1本でも可)
ジャケットの下(中)は、白のピケベスト・同じ素材の蝶ネクタイをつけ、小物は白で統一することがルールとされています。
燕尾服は英語でなんという?読み方や歴史を解説
燕尾服は英語でtail coat(テールコート)や、swallow-tail coat(スワローテールコート)と呼ばれます。
「えんびふく」という呼び方は漢字であることからも分かるように日本特有の呼び方です。(中国語でも燕尾服と書きます)
フォーマルスーツで燕尾服だけが漢字の名前になっているのは、一番歴史が古いことが理由として考えられます。
西洋では1800年前半には燕尾服が夜の礼装となり、1850年頃にはモーニングやタキシードも礼装になりました。
日本では1872年の服制の規定により礼装が和装→洋装になり、その時に定められた礼装が燕尾服でした。
1872年というと明治5年で、少し前まで江戸時代だった頃です。
当時の日本人にわかりやすいように『燕尾服』というイメージしやすい漢字が当てられたと考えられており、モーニングやタキシードが着られるようになった1900年ごろとは時代背景が異なっています。
燕尾服は西洋だけでなく日本でも歴史と伝統のある第一礼装なのです。
燕尾服を着るのはどんな時?
燕尾服を着る機会は少ないことは確かですが、どのような場合に着るものなのでしょうか。
燕尾服が実際に着られるのは
- 宮中での晩餐会
- 国家主催のパーティー
- 勲二等以上の叙勲
- ノーベル賞の授賞式
- 結婚式の主催者
- オーケストラの指揮者、楽器演奏者、
- 一流ホテルのドアマン
- ダンスの競技会
などで、格式高い式典や伝統的な行事、相手に敬意を示すシーンです。
なぜ燕尾服を着るのでしょうか。次の章でくわしく解説します。
燕尾服はいつ着るのが正解か
燕尾服をいつ着るか、なぜ着るかと考える時、フォーマルスーツのルールを知る必要があります。
フォーマルウェアとは、あらたまった場において、相手を思い、敬う表現として着分ける衣装のことで、礼儀作法のようなものです。
正礼装・準礼装・略礼装のドレスコードがあり、昼の装いと夜の装いが時間帯によって分かれています。
- 正礼装…国際プロトコール(国家間の儀礼上のルール)に従ったフォーマルウェア
- 準礼装…日本で作られた正礼装に準じたフォーマルウェア
- 略礼装…略式の礼装とされ、礼服の中で最も格式が低い。時間にとらわれないフォーマルウェア
正礼装 昼 | 正礼装 夜 | 正礼装 夜 | 準礼装 昼 | 準礼装 昼 | 準礼装 夜 | 準礼装 夜 | 略礼装 | |
メンズスーツの分類 | コート | モーニング燕尾服 (ホワイトタイ) | (ブラックタイ) | タキシードディレクターズスーツ | ブラックスーツ | ファンシータキシード | ファンシースーツ | など | ダークスーツ
個人 主催者 | 結婚式・披露宴 | 結婚式・披露宴 | 結婚式・披露宴・パーティ・晩餐会 | 結婚式・披露宴・その他の会・式 | 結婚式・披露宴・お宮参り・七五三など | 結婚式・披露宴・パーティ | 結婚式・披露宴・パーティ | 結婚式・結婚式の2次会など |
個人 参列者 | 結婚式・披露宴 | 結婚式・披露宴 パーティ | 結婚式・披露宴 | 結婚式・披露宴・お受験・その他の会 | 結婚式・披露宴・パーティなど | 結婚式・披露宴・パーティなど | 結婚式・結婚式の2次会など | |
企業・公式行事 主催者 | 叙勲・園遊会・記念式典・祝賀会・入学式・卒業式・など | 大綬章親授式・ノーベル賞・宮中晩餐会・記念式典など | 表彰パーティ・記念式典・レセプション・祝賀会など | 記念式典・祝賀会・入園式・卒園式・謝恩会 | 記念式典・祝賀会・入園式・卒園式・謝恩会など | 記念式典・レセプション・祝賀会・表彰パーティなど | クリスマスパーティ | 結婚式・結婚式の2次会など |
企業・公式行事 参列者 | 叙勲・園遊会 | 大綬章親授式・ノーベル賞・宮中晩餐会・記念式典など | 表彰パーティ・記念式典・レセプション・祝賀会など | 記念式典・祝賀会・園遊会・謝恩会 | 記念式典・祝賀会・入園式・卒園式・入学式・卒業式など | 記念式典・レセプション・祝賀会・表彰パーティなど | 記念式典・レセプション・祝賀会・表彰パーティなど | 結婚式・結婚式の2次会など |
燕尾服は夜の正装(正礼装)
燕尾服は正装の中でも一番格式の高い正礼装で、主に夜に着用します。
正礼装は、国家間で定められた国際プロトコールに準じたフォーマルウェアのため、国家レベルでの行事では着ることが礼儀・ルールとして決められています。
- 宮中での晩餐会
- 国家主催のパーティー
- 勲二等以上の叙勲
- ノーベル賞の授賞式
上記以外でも、招待状のドレスコードに“White tie”または”Most Formal”とつく場合は燕尾服を着ますが、日本の一般市民に求めるられることはありません。
勲章を佩用できるのは原則として燕尾服のみとされており、他のフォーマルウェアとは別格の格式高いものと認識しておきましょう。
燕尾服の結婚式での位置づけ
燕尾服は結婚式でも着られます。
国際行事に参加しない一般市民にとって、結婚式が燕尾服を着用する唯一の機会といえます。
とくに燕尾服の白色は、結婚式では新郎だけが着る特別なものです。
結婚式の場合は「衣装」のように着られることもあり、夜にこだわらず着られることもありますが、基本的なルールでは夜の礼装であることを知っておきましょう。
ウェディングドレスにはモーニングコートで合わせることが多いのですが、お色直しで新婦がイブニングドレスを着た時に、夜のドレスとされるイブニングドレスとの格を合わせるために新郎が燕尾服を着るケースが多く、ドレスの色に合わせて白の燕尾服も着られています。
フォーマルシーンの代表である結婚式ですが、近年はお色直しをするような結婚式は減少傾向にあり、燕尾服を目にする機会はますます減ってきているのが実情です。
衣装としての燕尾服
燕尾服は衣装として着ることもあり、社交ダンスや指揮者のイメージも強いものです。
- ダンス競技
- マジシャン
- オーケストラの指揮者、楽器演奏者
- 一流ホテルのドアマン
など、公式行事ではなくても燕尾服を衣装のように着る例は多くあります。
どれも伝統的な行事のしきたりを守るため、さらには出会う人に最高の敬意を服装をもって表そうという高い意識のもと、燕尾服が活躍しています。
燕尾服・タキシード・モーニングの違いとは
燕尾服・タキシード・モーニングはフォーマルスーツを語る上で、欠かせないものです。
形状の違いはもちろん、格式や来ていくシーンに違いがあり、間違いやすいものでもあります。
フォーマルスーツの違いや着分ける目安などのくわしい解説は≫燕尾服・タキシード・モーニングの違いを参考にしてください。
燕尾服の着方や座り方などの基本マナーを解説
- 燕尾服は別名「ホワイトタイ」と呼ばれ、白い蝶ネクタイをするルールがある
- ネクタイ以外のVゾーンもすべて白で統一する
- ベスト・シャツ・小物や”着方”にルールがあり、アレンジは許されない
- 裾はお尻に敷かずに座る
厳密なルールのある燕尾服の正しい着方と基本アイテムを解説します。
燕尾服の「着方」ルール
ベスト(ウエストコート)
- 白の「コットンピケ」という素材の衿付きベストが基本
- 後ろのないバックレスタイプが一般的
シャツ
- 白のスティッフブザムシャツ(別名:燕尾服シャツ・イカ胸シャツ)のウィングカラー
- カフスボタンと同じ素材の飾りボタン(スタッズ)がつく
ネクタイ
- 白い蝶ネクタイで素材はベストと同じ「コットンピケ」
ポケットチーフ
- 白いシルク素材のポケットチーフを使用する
靴・靴下
- 靴は黒のエナメル素材で、紐靴(オックスフォードシューズ)かオペラパンプス
- 靴下は黒のハイソックス(薄手)
カフスボタン(宝石類)
- パール・白蝶貝・プラチナなど、白の品のあるもの
- 白黒でコーディネートすることが基本で、金や色のある装飾品は避ける
手袋
- 舞踏会以外ではつけないこともある
- 白の手袋が基本で、素材は鹿革製が伝統
帽子
- 帽子をかぶる場合は黒のシルクハット・オペラハットのみ着用できる
正しい座り方
燕尾服は座り方にもコツが必要です。
特徴のある長い裾は、座る時に捌いて(さばいて)椅子の背もたれ側に自然に流して“お尻に敷かず”座ります。
裾は中心で分かれるようになっているので、背もたれがある場合は左右に垂らして座るとキレイに納まります。
あまり深く腰掛けず、背もたれにもたれないように座ることが好ましいとされており、これらのルールは裾の長いモーニングでも同じです。
燕尾服にあわせた女性の装いを解説
燕尾服は女性ではなく男性向けのフォーマルウェアです。
現在、ドレスコードは男性に向けて決められており、女性は「男性のドレスコードに準じる」というルールのもと、着衣を選ぶようになっています。
男性が燕尾服の場合、女性は何を着るべきなのでしょうか。
燕尾服の時、女性はドレスか着物
燕尾服の格に合わせた女性のフォーマルウェアは、イブニングドレスか黒留袖(五つ紋)、本振袖です。
男性と違い、女性はフォーマルな場での和装が広く受け入れられているので、洋装か和装か、というのはある程度自由に決められます。
ただし、国家的な公式行事では「国際プロトコールに従う」という理由から洋装、結婚式の新郎新婦では「男女合わせる」という理由で和装・洋装を決めます。
また、結婚式の新郎新婦の母親や、葬儀・告別式の主催者(女性)は和装にすることが一般的なため、格式だけでなくTPOで着分ける知識も必要です。
和装か洋装かで悩む場合は、マナーブックなどでよくしらべてから検討しましょう。
燕尾服にはレディースものもある
燕尾服はレディースものもあり、女性マジシャンや演劇(宝塚など)の「衣装」として、男性らしさや、伝統的な印象の演出のため好まれています。
女性用燕尾服はネット販売などで購入できますが、あくまでも「衣装」であり、フォーマルシーンではドレスか和服を着なくではいけません。
個人的に着るのはかまいませんが、女性のフォーマルウェアは燕尾服ではないので注意しましょう。
燕尾服はどこで買うべきか
燕尾服をどこで買うかは、何パターンかあるのですが、スーツ量販店やスーツ量販店のオンラインストアでも購入することができ、一番手軽な購入方法です。
その他に、デパートのスーツ売り場やオーダースーツの店舗でも購入することができます。
一般的なスーツと違い、ニーズが多くはないので、扱っていない場合もあります。
念のため事前に問い合わせすることをおすすめします。
燕尾服はレンタルが多い
燕尾服はレンタルですませるというパターンがとても多く、とくに結婚式の場合は親族も本人も、一度しか着ないためレンタルが多くなります。
結婚式場やホテルに併設された貸衣装で手軽に借りるほか、ネットでレンタルもできるようになり、選択肢がとても多くなりました。
燕尾服にかぎらず、フォーマルウェアを一度しか着る予定がないのであれば、価格も安く済み、保管する手間も省けるためレンタルもオススメです。
ただし、サイズが合うかどうかはとても重要なポイントになるので、ネットレンタルを使用する場合はスーツサイズの測り方をチェックして、できるだけ自分の体にあったものを選ぶようにしましょう。
2回以上着るならオーダーもおすすめ
2回以上着る機会がある、または、特殊体型で合うスーツがない場合はぜひ検討してください。
オーダースーツはジャストサイズで仕上がるため、とてもスッキリした印象になります。
一度しか着ない場合でも、燕尾服を着るようなシーンでは写真撮影をすることも多く、より体にあったスーツがよいでしょうし、衣類を手元に保管することで記念にもなります。
※現在、GINZA SAKAEYAでは燕尾服のオーダーのお取り扱いはおこなっておりません
フォーマルウェアはルールが大切
厳格なルールで決められたフォーマルウェアを着分けることはとても重要なマナー(礼儀)です。
格式の高いものほど、個人の判断や流行で変えてはいけません。
最も格式の高い正礼装である燕尾服は、決められたマナー通りに着ましょう。
- 燕尾服は正礼装であり、国際プロトコールに従ったフォーマルウェア
- 国家レベルでの行事では着ることが礼儀・ルールとして決められている
- ドレスコードに“White tie”または”Most Formal”とつく場合は燕尾服を着る
- ネクタイ・ベストなどのVゾーンは白一色でまとめる
- 燕尾服の場合、女性はイブニングドレスか黒留袖(五つ紋)、本振袖
一般市民には、燕尾服ほど格式の高い礼装をする機会はほとんどありませんが、礼装のマナーを知っておくことは重要です。
入学式や七五三などでは少しずつカジュアル化も進んでいるため、これから礼装マナーも変わるかもしれません。
悩んだ時は信頼できる出典のマナーBOOKやマナーページを確認しましょう。
マナーも大切ですが、相手を敬い、思いやる心も大切に、フォーマルな場を楽しみましょう。