- アメトラってどんなファッションスタイルなの?
- アメトラはアメカジやブリトラと何が違うの?
- アメトラを取り入れた今風のスーツコーデを教えて!
ファッションの流行は繰り返すという言葉をよく耳にしますが、王道や定番のコーデしかないように思えるスーツの着こなしにおいても当てはまる部分があります。
特に最近ファッションシーンで注目を集めているのが「アメトラ」で、通常のファッションのみならずビジネスシーンにおけるスーツコーデに取り入れる人も増えてきています。
その一方でアメトラがどんなファッションスタイルなのかについての理解は、意外にあやふやな人が多かったり、中には間違えて覚えてしまっている人も少なくないようです。
そこで今回は、スーツファッションで注目を集める”アメトラ”について詳しく解説します。
アメトラの基本情報からコーデのポイントまで紹介しますので、これを機にしっかりと覚えてコーデに活かしてください!
まずはアメトラの基本情報を知っておこう!
冒頭でも「ファッションの流行は”繰り返す”」という言葉を紹介したことからも判るように、アメトラの歴史は古くスタイルの起こりは19世紀末にまでさかのぼります。
アメトラとは、アメリカの伝統的(traditional)なファッションスタイル全般を指すファッション用語です。
American traditionalの略称ですが、日本ではトラディショナルの和製英語”Trad”を使い、American TradやAmerican Trad Styleと表現されることもあります。
アメトラの理解が曖昧だったり、人によってイメージがまちまちになってしまう原因は時代背景ごとに基本となる3つの異なるファッションスタイルが存在するからです。
アメトラで最も伝統的なスタイル「トラディショナル・アメリカン」
アメリカの時代背景ごとに流行し、異なるファッションを包括するアメトラですが、最も古く伝統的なスタイルが19世紀末ころアメリカ東部を中心に流行した「トラディショナル・アメリカン」です。
19世紀末のアメリカは、南北戦争が終結し黒人奴隷の廃止、さらには第二次経済革命が起こるなど激動の時代でした。
トラディショナル・アメリカンとは、簡単に言うとアメリカでこの時代に確立され発展した独自のスーツスタイルを意味します。
トラディショナル・アメリカンの特徴
- 肩パットは無く(または薄く)ナチュラルショルダー
- ウェストの絞りは無くシルエットは箱型
- 従来のスーツに比べてカジュアルな雰囲気や着こなし
トラディショナル・アメリカンスタイルが確立する以前は、英国式のブリティッシュスタイル(詳しくは後述)がスーツスタイルの主流でした。
しかし
- 縫製工場の技術が高くなり大量生産が可能に(第二次経済革命の影響)
- 経済成長と共にスーツスタイルが広く普及
こうした時代背景もあり、アメリカ独自の「生産効率の重視」や「ラフな着こなし」が加わった新しいスーツスタイルとして確立したのがトラディショナル・アメリカンです。
特に現在も存在するアメリカ最古の紳士服ブランド「ブルックス・ブラザーズ」が1918年に作った、3ボタンのナチュラルショルダーが特徴的なスーツは、アメトラの原型になったとも言われています。
アメトラの基本スタイル「アイビールック」とは
いわゆる「古き良きアメリカ」と呼ばれる1950年代に入ると、前述のトラディショナル・アメリカンのスタイルを若い世代がアレンジして新しいファッションを確立していきます。
アメトラの基本スタイルに数えられる「アイビールック」の誕生です。
1950年代、※アイビーリーグの大学に通う学生たちが好んだ服装だったことからアイビールック(スタイル)と呼ばれるようになったファッションスタイルです。
※アイビーリーグは、日本で言えば「6大学野球」のようなもの。野球ではなく競技はアメフトで、ハーバードやコロンビアなど名門大学8つで競われるリーグ戦の名称。
古き良きアメリカの自由で伸びやかな時代を象徴するかのように、既存のスーツスタイルをより「ラフでカジュアル」に着崩した服装の総称がアイビールックです。
アイビールックの特徴や定番アイテム
- ネイビーブレザーやグレーブレザーが定番アイテム
- チノパンなどカジュアルなズボン
- ペニーローファー(コインローファー)
- ボタンダウンシャツ(襟ボタンのついたシャツ)
スーツスタイルをベースとしつつ、堅苦しい印象ではなくラフに着こなすスタイルこそがアイビールックの大きな特徴です。
カジュアル感がさらに加速した「プレッピー」
1970年代に入ると、アメリカにおける若者のファッションカルチャーは多様性を見せ始めます。
社会への反発や新たな価値観を声高に叫ぶ若者が新たに作りだしたヒッピースタイルは爆発的に流行しましたが、アメトラの基本スタイルには入っていません。
アメトラの基本スタイル3つ目は、1970年代後半~1980年代に流行したプレッピーです。
アイビールックと同様に大学生や卒業生(プレッピー)によって確立されたスタイルで、よりカジュアルでカラフルなアイテムを取り入れたファッションとなっています。
アメトラとアメカジの違いとは
アメトラの定義は前述の通り、アメリカの伝統的なファッションスタイルを表す言葉です。
一方、アメカジはアメリカン・カジュアルの略で【アメリカの若者の間で流行しているラフなファッション】を表す言葉となっています。
実はアメカジという言葉とジャンルは、日本のファッションシーンで誕生したという点が最大の相違点だといえるでしょう。
アメカジに分類されるファッションスタイルには、Tシャツにジーンズという一般的なスタイル以外にも
- カレッジスタイル(プレッピーに類似)
- ウェスタンスタイル(カウボーイ風)
- バイカースタイル(バイカー風)
- サーフスタイル(サーファー風)
- ワークスタイル(労働者風)
- ミリタリースタイル(軍服風)
上記のようにジャンルや系統で分類されていて、アメトラとは異なり日本人向けに発信され続けているスタイルということになります。
アメトラが伝統的で大きく変化しない王道スタイルだとすれば、アメカジは時代ごとにアメリカの若者文化を反映するスタイルだと言えるでしょう。
アメトラとよく対比される「ブリトラ」とは
アメトラの元祖とも言えるトラディショナル・アメリカンは、ブリトラに独自のアレンジをくわえて誕生したことはお伝えしましたが、それでは”ブリトラ”とはどんなファッションスタイルなのでしょうか。
ブリトラはブリティッシュ・トラディショナルの略称で、その言葉の意味は「イギリスの伝統的なスタイル」となります。
そもそもスーツ文化はイギリスが発祥の地と言われていて、礼服として着用できる「正装」として発展したブリトラは良く言えば王道スタイル、悪く言えば保守的で変化を拒むスーツスタイルです。
クラシカルできっちりとスーツを着こなすイメージが強いブリトラは、以下のような特徴を持つスーツスタイルです。
- 基本的には3ピーススタイル(ベストも着るスタイル)
- 厚みのある肩パッドで肩幅は広く見える
- ウェスト部分は絞られているため、逆三角形のシルエット
- 3つボタンジャケットが一般的
まさにブリトラは英国紳士のイメージそのままのスーツスタイルで、フォーマルな雰囲気としっかりとしたスーツの着こなしとなります。
アメトラのように着崩してカジュアルさを出すことはありませんが、イギリスの伝統的な柄である「チェック」を合わせたコーデなどはブリトラの少し堅苦しい印象が和らぐ着こなしと言えます。
例えるなら、アーサー・コナン・ドイル原作のシャーロック・ホームズを映像化した作品のホームズやワトソンの服装を思い浮かべるとイメージしやすいかもしれませんね。
アメトラを取り入れた今風スーツコーデとは
オフィスカジュアルやビジネスカジュアルが浸透し、日本でもビジネスシーンでさまざまなスーツファッションを楽しむ人が増えてきました。
スーツコーデのトレンドとしてクラシカルなスタイルが再評価され、アメトラを取り入れたコーデも今風コーデの1つとして人気です。
しかし、これまでお伝えしてきた通りアメトラに共通するキーワードは「カジュアルさ」や「ラフな着崩し」なので、ビジネススーツに取り入れるときは加減を間違うとマナーや常識を疑われる恐れがあるのも確かです。
違いを理解しておきたい「オフィスカジュアル」と「ビジネスカジュアル」
働き方の多様化に合わせ、「オフィスカジュアル」や「ビジネスカジュアル」が許される企業が増えてきました。
どちらの言葉にも【カジュアル】という名称が入っているため、ラフなファッションが許されると思ってしまいがちですが、実は両者のニュアンスはかなり違います!
オフィスカジュアルならアメトラをかなり意識してもOK
オフィスカジュアルとは、スーツスタイルに限定されないカジュアル要素を取り入れたビジネス向きの服装です。
企業方針や職場の雰囲気などにより、許容範囲に差はありますがアメトラの要素をかなり取り入れた服装でも問題無く着用することが可能です。
基本的にオフィスカジュアルは、恒常的に”社外の人間と顔を合わせない”ことを前提とした職場で適用されることが多く、リラックスして仕事に臨める服としてスーツ以外でもOKとなるケースも少なくありません。
オフィスカジュアルのポイントと注意点
- 突発的な来客など社外の人の目に触れても「失礼に思われない」服装を意識する
- 清潔感を損なう服装はNG(例:ダメージジーンズなど)
- 派手な色や目立つ服装は避ける
- アメトラを意識するなら「アイビールック」までが妥当(プレッピーはやりすぎ)
- 緊急時はジャケットに合わせられるコーデがおすすめ!
オフィスカジュアルは、後述するビジネスカジュアルに比べればかなり自由な服装が許されますが、シワや汚れなど清潔感の無い服装は避けましょう。
職種にもよりますが社外の人間に対応する可能性が少しでもあるなら、ジャケットだけは準備しておいて緊急時に羽織れるコーデを意識するのがおすすめです。
ビジネスカジュアルでアメトラを取り入れるなら部分的に!
ビジネスカジュアルとは、その名の通りビジネスシーンを前提にしつつカジュアル要素を取り入れた服装というニュアンスになります。
オフィスカジュアルとは異なり、接客や取引などで社外の人と接することが前提にあるため、相手に失礼な印象を与えない最低限の礼儀をわきまえた服装である必要があるといえます。
ビジネスカジュアルの場合、アメトラ要素のような遊び心を「どこ」に「どの程度」入れるのかの線引きが難しく、トレンドを意識する場合でも部分的に取り入れる方が無難です。
ビジネスカジュアルのポイントと注意点
- ジャケットとパンツという基本スタイルは崩さない
- 上着は基本的に襟ありのアイテムを選んだ方が無難
- 清潔感のある服装を意識する
- 許容範囲の判断がつかないときは同僚や上司などに合わせる
ビジネスカジュアルは、企業ごとにドレスコードとして許される範囲にかなり差があるため、職場の雰囲気や他の人を参考にしながらカジュアルすぎない服装を意識するのがポイントです。
アメトラを取り入れた今風スーツコーデのポイント
オフィスカジュアルが許される環境なら、アメトラを取り入れたコーデは比較的簡単です。
しかしビジネスカジュアルの場合はアメトラを取り入れたくても、その加減の見極めが難しくどこまでなら許されるのか悩む人も多いのではないでしょうか。
企業や職場の雰囲気によって許容範囲に差があるため、万人共通のポイントという訳にはいきませんが、厳しい中でも遊び心を取り入れたいという人に向けた今風スーツコーデのポイントをいくつか紹介しますので参考にしてみてください。
アメトラ風にパンツを少しハズしてみる
ビジネススーツは基本的にセットアップですが、アメトラ風のカジュアルっぽさを簡単に出すコーデとしておすすめなのが、パンツをハズしてアメトラ風にコーデするスタイルです。
チノパンの着用が許される場合は、アイビールックのようにネイビーやグレーのジャケットを合わせたコーデが人気ですが、ビジネスカジュアルの許容範囲に自信が持てないときは、色味の違うパンツとジャケットを組み合わせるだけでもアメトラっぽいコーデを楽しむことが可能です。
スラックスよりチノパンの方がカジュアル感が強く履いていても楽ですが、ドレスコードが厳しそうならパンツの組合せを変えてカジュアル感を演出しましょう。
- チノパンや色の異なるスラックスを合わせるときはシルエットに注意!
- オーバーサイズでダボッとしたパンツはだらしない印象を与えてしまうので、適切なサイズ感のパンツを選ぶのがポイントです。
服装に厳しい環境なら小物をハズしてアメトラ風に
ビジネスカジュアルが許されているはずなのに、周囲を見渡すと全員がしっかりとスーツを着用している・・・。
こんな状況で、一人だけアメトラ風のスーツコーデでカジュアル感を楽しむのはハードルが高いと感じてしまうものです。
そんなときは、シャツやネクタイなどの小物を少しハズしてアメトラ要素を取り入れたコーデなら、少しだけいつもと違うスーツファッションを楽しむことができます。
例えば、普通の白いYシャツをチェック柄や明るい色合いのボタンダウンシャツに変えてみたり、アメトラのプレッピースタイルのように、ネクタイに赤や緑など明るい色合いが入ったものを選ぶだけでも印象がグッと変わります。
- 今風アメトラコーデで人気のアイテムはストライプに少し派手な色が入ったネクタイ!
- ネクタイやシャツでアメトラっぽい挿し色を少し足すとカジュアル感が引き立つのでおすすめです。
高級感のあるアメトラ風コーデとアイテム紹介
最後に、当店GINZA SAKAEYAが取り扱う高級スーツブランド「ゼニア」のアイテムを使ったアメトラ風コーデを紹介します。
オフィスカジュアルなら、快適で楽な着心地とスマートな印象を与えるコーデにしたいものです。
Tシャツにジーンズというラフな服装ながら、ジャケットを羽織ることで一気にビジネスカジュアルにも対応できます。
ネイビージャケットでアメトラっぽさを演出し、カジュアルなのにどこか高級感のあるスタイルで経営者や管理職の方に特におすすめしたいコーデです。
●コーデ画像に使用されているアイテムの紹介
ジャケット:ゼニア生地のトラベラー使用(70,000円+税)
Tシャツ:素材に最高級のコットンを使用した最高の着心地(39,000円+税)
ジーンズ:スリム仕様の黒色で素材には岡山デニムを使用(45,000円+税)
ビジネスカジュアルで、もう少しカジュアル感を抑えつつアメトラを取り入れたい方におすすめなコーデも紹介します。
ジャケットにはアメトラ定番のネイビーを取り入れつつ、Yシャツとネクタイでしっかりとビジネス仕様に。
トレンドの紺ブレに、あえて少しハズした白で織り目が入るスラックスタイプの”ジーンズ”を合わせているのがポイントです。
●コーデ画像に使用されているアイテムの紹介
ジャケット:ゼニア生地のトラベラー使用(70,000円+税)
シャツ:ゼニア生地で作られたライトブルーのシャツ(60,000円+税)
ジーンズ:岡山デニムが素材のスラックス仕様ジーンズ(39,000円+税)
GINZA SAKAEYAのHPなら、上記で紹介したコーデ以外にもオフィスカジュアルやビジネスカジュアルにおすすめのコーデやアイテムをチェックできます!
ラグジュアリーな雰囲気を損なうことなく、カジュアルなスーツファッションを楽しみたい方は、高級スーツを取り入れたスタイルも検討してみてはいかがでしょうか。
アメトラにこだわりすぎないのが今風コーデ!自分なりのスーツファッションを楽しもう!
アメトラは「古き良きアメリカ」を象徴する、自由でほどよいカジュアル感が魅力的なファッションスタイルです。
しかしアメトラが流行っているからと、カジュアルに寄せ過ぎたスーツコーデは着用シーンによっては相手に失礼だと思わせてしまう恐れがあるので注意しましょう。
- アメトラはアメリカの伝統的なファッションスタイルの総称
- スーツなのにカジュアル感があるスタイルとして今風スーツコーデのトレンドになっている
- 実際に取り入れるときは、職場環境や職種を意識してやりすぎないことが大切
実は現代におけるアメトラは、今風に微妙なアレンジが加えられた「新しいスタイル」に変化しつつあります。
従来通りの四角いラインが特徴のスーツではなく、美しいラインが魅力のイタリアスーツを組み合わせたり、部分的にブリトラっぽさが混じっていたりとオリジナリティの溢れるコーデを楽しむ人が増えているからです。
ファッションは繰り返すものですが、同時に時代と共に形を変えるものでもあります。
是非、自分なりにアメトラの良さを取り入れた自分だけのスーツファッションを楽しんでみてくださいね!