- 梳毛(そもう)とは何を意味する言葉なのか知りたい!
- 梳毛と紡毛(ぼうもう)の違いやそれぞれの特徴を教えて!
- 梳毛を使った服にはどんなものがあるの?おすすめがあるなら知りたい!
どんな服にも表示ラベルが付いていますが、高級スーツやセーターに【原材料:羊毛100%】と記載されているのを目にしたことが一度はあるのではないでしょうか。
同じ羊毛100%にも関わらず、手触りや質感が全く異なる服になっていることは不思議に思えますが、原材料は同じであっても使われている糸に大きな違いがあります。
実は羊毛(ウール)には梳毛(そもう)と紡毛(ぼうもう)の2種類が存在し、どちらを使うかで全く性質が異なる服の仕上がりになっているのです。
今回は梳毛と紡毛それぞれが持つ特徴や違い、取り扱いで注意すべきポイントなどを詳しく解説します。
記事後半ではスーツ生地の選び方なども紹介していますので、お仕立てを検討している方はぜひ最後までお付き合いください!
梳毛と紡毛それぞれの特徴と違いとは
梳毛と紡毛は製造工程や素材としての特徴が大きく異なりますが、どちらも原料となっているのは羊毛です。
梳毛・紡毛のどちらも基本的には同じ羊毛から作られていますが、見た目や手触りは驚くほど違いがあります。
なぜ同じ羊の毛から作られているのに、これほどまでに特徴が異なる生地が作られるのかは、梳毛と紡毛の違いを知るとよくわかります。
梳毛は複雑な製造工程を経て作られる
梳毛という言葉に使われる「梳(そ)」という漢字は、訓読みすると【くし】や【くしけず(る)】と読みます。
漢字の読み方からもわかる通り、梳毛とは「羊毛を綺麗に梳(くしけず)った毛」ということになります。
洗浄や乾燥、原毛の調合など細かい製造工程の説明は省きますが、梳毛と紡毛の違いを決定付けているのは「生地の材料に使われる毛の違い」です。
羊毛を櫛で梳いて長さや細さを均一にすることを”コーミング”と呼びますが、このコーミング工程で繊維が綺麗に揃った梳毛で作られた糸が梳毛糸となります。
コーミング加工された梳毛糸で作られた生地の特徴
- 毛羽(短い毛や切れた毛)が少なく滑らかな質感
- 繊維が一定方向に並ぶため美しい光沢感を持つ
- 細い毛を強く撚ることで耐久性に優れる
紡毛はコーミング処理をせずに作られる
紡毛とは、その名の通り糸を紡ぐために羊の毛を集めたものを意味します。
羊毛の長さや太さは不均一で前述した梳毛のコーミングで生じた短い毛なども集めて紡毛として利用されます。
もちろん紡毛であっても洗浄や乾燥など羊毛から糸を紡ぐために必要となる基本的な処理は行いますが、梳毛に比べると工程は少なく大量に作れます。
簡単な工程で大量に作れる紡毛ならではの特徴
- 番手(糸の太さ)は全体的に太目になる
- 毛が短く不均一なので毛羽が多い質感となる
- 繊維の隙間が多く空気を含みやすいので熱の伝導率が低い(熱が籠りやすい)
- 梳毛に比べて安価
ウールと聞いてイメージする人が多いセーターは、まさに紡毛が使われた代表的な衣料です。
梳毛の方が紡毛よりも優れているのか?
長く均一な毛だけを選別した梳毛と、羊毛そのものを活かして作られる紡毛。
製造工程や希少性から、梳毛は素晴らしく紡毛は劣っていると考えてしまいがちです。
市場価値(価格)だけで比較した場合、梳毛で作られた生地の方が紡毛生地よりも高価であることは確かです。
しかし紡毛は、前項で触れたように安価で高い保温性を持つ衣料を仕立てることができる上に、表面の毛羽立ちが服に独特の表情を与えてくれるため、単純に優劣を決めてしまうと服選びやコーデの選択肢を狭めてしまいます。
梳毛と紡毛が持つ特徴の違いを正しく理解した上で、自分が購入したいと思う服との相性や着用シーンを想定しながら上手に素材を選び分けるようにしましょう。
続いては梳毛や紡毛が使われることが多い代表的な衣料品と、取り扱い方法の違いについて解説します。
梳毛の代表的な衣料と取扱いにおける注意点
梳毛は「高級スーツの生地」に使われるのが一般的ですが、スーツ以外にもセーターやワンピースなどを梳毛で仕立てる場合もあります。
梳毛と紡毛に優劣は無いと言いましたが、手触りや光沢の良さや希少性の高さから”高級素材”として扱われます。
そのため、パッと見では普通のセーターやワンピースでも高額な場合は素材に梳毛が使われている可能性が高いと言えるでしょう。
毛羽が少なく紡毛のようなチクチクした肌触りがなく、手触りも滑らかなので実際に手に取れば違いに気付くはずです。
梳毛が使われる代表的な衣料
- 高級スーツ
- 主にハイブランドのウール衣料全般(セーターやワンピース、カーディガンなど)
- ウールなのに”洗える”を売りにした商品
ウール衣料と言えば【洗濯すると縮む】でお馴染みですが、実は梳毛で作られた衣料は洗濯に強いという特徴を持っています。
紡毛で作られたセーターは、網目が大胆で暖かみのある毛羽立った質感です。
羊毛は水に濡れた状態で強く擦りあわせると、繊維と繊維が絡まり合い硬くなるという性質を持っています。(フェルト収縮と呼ばれる現象)
梳毛糸は細くしっかりと強めに撚って作られ、目が細かく毛羽が少ないので洗濯をしても繊維同士が絡む心配が少ないため縮みにくいのです。
梳毛が使われた衣料の取扱いについて
- 水や洗濯には比較的強いので服の種類によっては自宅で洗える!
- ただし”型崩れ”は防げないのでスーツやコートはクリーニング店へ
- アルカリ性の洗剤は生地を傷めるので避ける
- 乾燥機ではなく陰干しで自然乾燥がおすすめ
梳毛を使ったセーターやワンピースなら、ネットに入れて中性洗剤を使い自宅で洗濯することも可能です。
しかし、高級スーツやコートのように”型崩れ”を避けたい衣類はクリーニング店に任せた方が良いでしょう。
紡毛の代表的な衣料と取扱いにおける注意点と役立つ小ネタ
紡毛が使われた衣料といえば、やはり冬物の定番「セーター」が代表的です。
他にも衣料ではありませんが、カーペットの材料としても紡毛がよく使われます。
前項で少し触れましたが、紡毛は繊維同士が濡れた状態で擦れて硬くなってしまうフェルト収縮が起きやすいので、洗濯をするときは注意が必要です。
紡毛が使われた衣料は、基本的に手洗いとなります。
梳毛と同じようにアルカリ性の洗剤や乾燥機は避けて、摩擦を抑えた押し洗いで優しく洗うのがおすすめです。
ウール衣料で悩みがちな”静電気”の対策に役立つ小ネタ
- ウールは帯電しやすい特徴を持つが、帯電するのは「+極」
- 静電気が発生するためには「+極」と「-極」が必要
- 同じ「+極」を帯電する素材でコーディネートすると静電気の発生が抑えられる!
- 「+極」を帯電する性質を持つのは、【ナイロン】【ウール】【シルク】【レーヨン】【綿】
- 「-極」を帯電する【アクリル】や【ポリエステル】は避けよう!
ウールのセーターと言えば真冬の”バチッ”が怖いですが、合わせる服の素材にも気を配ると防ぐことができますよ。
梳毛と言えばスーツ生地!選び方のポイントや種類を知っておこう
梳毛糸で作られた生地には【美しく自然な光沢】や【シルクにも劣らない滑らかな手触り】などの特徴がありますが、そのポテンシャルを最大限に引き出しているのが高級スーツ生地だと言っても過言ではないでしょう。
スーツを仕立てるときに”ウーステッド”という言葉を耳にすることがあると思いますが、実はウーステッドとは梳毛という意味。(ウーステッドについては、過去記事でも詳しく解説していますので合わせて読んでみてください)
梳毛糸が初めて作られたイギリスの地名にちなんで名づけられたウーステッドは、高級スーツの代表的な生地を表す言葉として現在も使われています。
しかし同じウーステッドでもスーツを仕立てるときは「選び方のポイント」を知らないと、思わぬ損をしたりイメージした仕上がりにならないこともるので注意が必要です。
同じ梳毛でもスーツ生地を選ぶときは”織り方”に注目しよう!
高級スーツの生地は、そのほとんどが番手の細い梳毛糸で作られています。
しかし同じ梳毛糸でも織り方によって、生地の見た目だけでなく性質や着用に適した季節などが変わってきますので、まずは織り方の違いを知っておきましょう。
梳毛を平織りしたスーツ生地の特徴
梳毛糸をタテ・ヨコと規則正しく繰り返して織るのが平織りです。
平織りされたスーツ生地の特徴
- 織りの密度に余裕があるため、通気性に優れている
- 光沢は抑えめ
- 生地の強度は高い
- 主に夏用スーツに使用されることが多い
通気性が高く夏の着用に適した特徴を持つのが平織りのスーツ生地ですが、光沢やツヤが控えめでややチープな印象の仕上がりになってしまうことも。
シンプルな織り方だけに、使用する梳毛糸の品質がダイレクトに仕上がりと直結しやすいとも言えます。
梳毛を綾織りしたスーツ生地の特徴
タテ糸(またはヨコ糸)を浮かせて、表面に綾目ができる綾織りは「ツイル」や「斜文織り」などとも呼ばれることがあります。
デニムやチノパンなども綾織りが用いられますが、ウールの梳毛で綾織りをすると密度が高くなり美しいツヤや光沢のある生地に仕上がります。
綾織りされたスーツ生地の特徴
- 滑らかで柔らかい肌触り
- 光沢やツヤが出る
- 生地の密度が高いため保温性に優れている
- 主に秋・冬用やオールシーズン対応のスーツに用いられる
同じ梳毛でも”品質”に大きな差があることも
天然ウールを使ったスーツ生地は、確かに梳毛が使われていますが品質がどれも同じという訳ではありません。
スーツ生地の原材料となる羊の毛にはランクが存在しています。
- 羊の品種や原産国
- 繊維の細さ(細いほど高品質)
同じ梳毛でも原材料が異なれば、当然ながら仕上がりも大きく変わってくるのです。
例えば、高級ウールとして聞き馴染みのある”メリノウール”とは、メリノ種という羊の毛を総称した言葉です。
同じメリノウールでも、さらに繊維の直径によって細かくランク分けされています。
前述した通り梳毛自体が希少なので天然ウール100%のスーツ生地は、”例え低ランクでも”それなりの価格になってしまいます。
そのため、少しでも安くスーツを仕立てよう!と値段だけで選んでしまうと、値段の割にはそれなり・・・という仕上がりになってしまう恐れがあるのです。
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梳毛(スーツ生地)は高価だからこそ慎重に選ぼう!
羊の毛を選別し長く細い毛のみを厳選して作られる梳毛で作られた服は、紡毛衣料に比べて価格は高くなります。
高い買い物になるからこそ、梳毛というだけで飛びつくのではなく原料となる羊毛のランクや仕上がりに目を向けて慎重に選ぶようにしましょう。
- 梳毛とは羊毛から”長く細い毛”だけを厳選したもの
- 紡毛は短い毛や梳毛の選別に漏れた毛を集めたもの
- 梳毛でも織り方によって生地の性質や見た目が変わる
- 梳毛の品質は羊の種類と繊維の細さでランク分けされている
梳毛自体が、紡毛に比べればその希少性から高額になりやすい素材です。
高い買い物になるからこそ、妥協せずに高品質な生地を選ぶことが大切です。
特にスーツ生地を選ぶときは、羊の種類や原産国はもちろん繊維の細さなどランクにまで目を向けてみましょう!