- スーツのアイロンがけを自分でしたいけど方法が判らないからクリーニングにだしている・・・
- スーツのアイロンがけを自分でやると上手くできない
- 楽にスーツのシワ伸ばしができる方法とかないの?
- 寝押しは良くないって本当?
スーツのアイロンがけ、面倒で難しそうだと諦めてはいないでしょうか。
定期的にクリーニングに出しているから自分は大丈夫・・と考えているなら要注意!
過度なクリーニングはお金がかかるだけでなく、スーツそのものを痛めてしまう恐れがあります。
そこで今回は、テーラー直伝の裏ワザと共にスーツのアイロンがけの方法を紹介します。
スーツを普段からパリッと着こなし、長持ちさせるためにもアイロンがけのやり方やテクニックをこの機会に覚えて、日ごろのメンテナンスに役立ててみてください。
過度なクリーニングはスーツを痛めるという話が気になった方は、下記記事でスーツとクリーニングの関係性と適切な頻度や出し方を解説していますので合わせて目を通してみてくださいね。
スーツのアイロンがけをする前に!準備物と注意点をチェック
スーツの正しいアイロンがけを解説する前に、まずは準備しておくべきアイテムと注意点をチェックしておきましょう。
スーツのアイロンがけをする前に揃えておくべき準備物
スーツのアイロンがけで準備すべき物は以下の通りです。
- スチームアイロン(スチーマーよりスチーム式のアイロンを推奨!理由は後述)
- あて布(ハンカチなどでも代用可能)
- アイロン台(腰の高さくらいのスタンド式が便利)
基本的には、アイロン・あて布・アイロン台の3つを準備するだけでOKです。
アイロンを持っていない人で購入を検討している場合は、スチーマーではなくスチーム式のアイロンがおすすめ。
ハンガーに吊るしたままでも簡単にシワが伸ばせるスチーマーは便利ですが、正しいやり方さえ覚えてしまえば圧倒的にスチームアイロンの方が綺麗に仕上がります。
なぜスチームアイロンの方が良いのか、その理由は以下の通りです。
- プレス(圧力)と蒸気でシワを伸ばす力が強く、慣れれば簡単であること
- 感染症対策としてスーツに付着したウィルスを死滅させる効果も期待できること
スーツに使われることが多いウール生地は、適度な湿度を与えることで自然にシワが伸びるという特性を持っています。
そのため、スチーマーで蒸気を当てるだけでもある程度の効果が得られるのは確かですが、ラインに沿った綺麗なシワ伸ばしを行うためにはプレスも同時に行う方が確実です。
また、感染症対策という観点からもスチームアイロンに軍配があがります。
厚生労働省の発表によると、高温による滅菌対策はコロナウィルスにも有効で、80℃なら10分間ほどで100℃なら30秒ほどで滅菌効果が期待できると言われています。
仕上がりと感染症対策、どちらの面でも高温スチーマーよりスチームアイロンの方が優れていることから、実際にテーラーでもお客様にはスチームアイロンを勧めるお店が大半です。
スーツのアイロンがけで注意すべきポイント
スーツのアイロンがけを自宅で行う場合は、【必ず当て布をする】のと【生地の素材に適した温度設定にする】という2つのポイントが重要です。
アイロンがけによるスーツのテカりを防ぐために、当て布は必須となります。
当て布はハンカチなどでも代用可能ですが、おすすめは綿100%の白い布です。
綿は通気性がよく熱にも強い素材だからという理由で、透過性の高い白ならスーツの状態を視認しやすくなるという理由から「綿100%の白い布」が当て布として最適なのです。
せっかく当て布をしても、適切な温度設定でアイロンをかけなければテカりの原因になってしまいます。
スーツの素材とアイロンの設定温度
- 熱に強い綿や麻が素材の場合は高温(180~200℃)で
- ウールは中温(140~160℃)
- 溶けやすいナイロンやアクリルなどの化学繊維は低温(110~130℃)
詳しくは後述しますが、スーツは部位によって使われている生地が異なる場合が多いので、アイロンをかける部位ごとに適切な温度に切り替えながら作業を行うようにしましょう。
スーツのアイロンのかけ方を徹底解説!ジャケット編
アイロンがけの準備が整ったら、早速スーツのアイロンがけにトライしてみましょう。
スーツのジャケットをアイロンがけするときの順番に決まりはありませんが、パーツごとに行うことを意識するのが基本です。
アイロンがけでは主に、袖・前身頃・後見頃・襟・裏地という5つの部位に切り分けて考えると良いでしょう。
必ずしも以下の順番通りで行う必要はありませんが、この記事では以下の流れでジャケットのアイロンがけを解説していきます。
- 肩から袖にかけて
- スーツの背中部分(後身頃)
- 裏地部分(省略可能)
- 襟部分
- スーツの前面(前見頃)
①肩から袖にかけてのアイロンがけ
アイロン台にスーツを被せるようにして肩口周辺からスタートします。
肩~袖のアイロンがけのポイント!
- アイロンを持っていない手でシワを伸ばしながら”優しく”かける
- ラインを意識しながら肩から袖に向かってかける
- プレスは弱めに
肩から袖の部位は、スーツ本来のラインを崩さないようにプレスは弱めを意識して優しくアイロンがけをしましょう。
②後見頃のアイロンがけ
①と同じようにアイロン台にスーツを被せた状態でOKなので、流れで後見頃へ移行するとスムーズです。
後見頃のアイロンがけのポイント!
- アイロンをかける方向は中心を起点に外側へ向かうように
- しっかりとプレスしてもOK
- 裾側を引っ張りながら行うとシワが伸びやすい
スーツの背中部分は、特に難しいポイントはありません。
しっかりとプレスをしながら、綺麗にシワを伸ばしてあげましょう。
③裏地部分のアイロンがけ
スーツの裏地部分へのアイロンがけは、とても効果的ですが難易度が高く失敗しやすいので省略しても大丈夫です。
裏地部分のアイロンがけのポイント!
- 素材が違うため必ず低温にしてスチームはOFFに
- 中心の折り目(キセ)を整える
- 中心から外へ向けてシワを伸ばしていく
裏地のアイロンがけは中心の縫い目部分を引っ張りながら整え、中心→外側に向けてシワを伸ばしていくのがコツです。
表地と違い、変な折り目が付いてしまうと戻すのが大変だったり、アイロンの温度を変えなければならないので、自信が無ければ無理に行う必要はありません。
④襟部分のアイロンがけ
続いては襟部分のアイロンがけです。
ここで言う襟とはジャケットの上襟部分(カラー)を意味しています。
下襟部分(ラペル)は、後述の前身頃のアイロンがけで行うことになります。
襟部分のアイロンがけのポイント!
- 襟を立てた状態にして裏側から芯のカーブに沿ってアイロンがけ
- 裏側が終わったら熱が冷めない内に折り返して折り目を綺麗に整える
襟部分は、最初に襟を立てて裏側からシワを伸ばす→折り返して形を整えるという順番がポイントです。
特に難しくはありませんが、強くプレスせずに元の形を崩さないように優しくアイロンがけをするようにしましょう。
⑤前身頃のアイロンがけ
スーツの前面は、アイロン台に半身を被せるようにして準備します。
前身頃のアイロンがけのポイント!
- ラペル(下襟部分)は開いて裏側から軽くアイロン
- 広い面は強めのプレスでも良いがボタンやポケット部分は優しく
- ボタン周りなど細かい部分はアイロンの先端を使い軽くシワ伸ばしを
前身頃のアイロンがけは基本的には後見頃と同じように、手でシワを伸ばしながらかけていきましょう。
ただし、プレスを弱くして優しくかけるべき部分もあるので注意が必要です。
ラペルやボタン周り、内ポケットのボタンが裏にある部分などは折り目がつかないようにプレスは弱めにして慎重なアイロンがけを心がけてください。
スーツのアイロンのかけ方を徹底解説!パンツ編
続いてはスーツのスラックス(パンツ)をアイロンがけする方法の解説です。
注意すべきポイントは【折り目を意識する】ことと、【プレスの強弱】です。
直線的でパーツが少ないようにみえるスラックスですが、ジャケットと同じように腰回り・膝部分・裾部分の3パーツに分けて順序よくアイロンがけをするのが綺麗に仕上げるコツになります。
①腰回りのアイロンがけ
アイロン台の先端にスラックスを履かせるような形で準備します。
腰回りのアイロンがけのポイント!
- 裏地→お尻側→前面の順番でスチームを充分当てながらアイロンがけ
- ファスナー部分は火傷の恐れがあるのでかけないように注意
- ボタン周りは優しく軽くを心がけて
ムレやすく排泄器官も近い腰回りは、スチームを充分当てて消臭や殺菌を意識してアイロンがけをしましょう。
②膝部分のアイロンがけ
腰回りの次は太もも~膝の部分をアイロンがけしていきます。
アイロン台に片足ずつ乗せて作業を行いましょう。
膝部分のアイロンがけのポイント!
- 折り目(センターライン)を合わせてアイロンがけ
- ラインが判らないときは縫い目を目安に揃えた状態で行う
- プレスは弱く!円を描くようにアイロンを滑らせるのがコツ
膝部分は着用時の動きが大きい部位なので、センターラインが曖昧で判りにくいことがよくあります。
無理に整えようとはせず、折り目を綺麗に合わせて円を描くように優しくシワやたるみを取り除いていきましょう。
③裾部分のアイロンがけ
ひざ下~裾にかけてのアイロンがけは、前述の膝部分と基本的には同じです。
裾部分のアイロンがけのポイント!
- 折り目をしっかりと合わせてアイロンをかける
- 裾はズレやすいのでしっかりと抑えながら円を描くように
スラックスの折り目を綺麗に仕上げるためには、裾から見える内側と外側の縫い目をしっかり重ねるようにしましょう。
④最後に折り目付けで仕上げを
膝や裾の段階で強くプレスしなかった理由は、折り目が曖昧だとズレやラインが複数入ってしまう恐れがあるからです。
スラックス全体のシワを伸ばしたあとに、しっかりと折り目付けを行って仕上げると綺麗な折り目をつけることができます。
折り目付けのポイント!
- センターラインが残っている場合はそのままプレス
- 折り目が曖昧なときは内側と外側の縫い目を重ねてからプレス
- 一気にかけず、細かくアイロンをあてながら仕上げるのがコツ
仕上げの工程となる折り目付けは、裾側から少しずつラインに沿ってアイロンをかけていきましょう。
テーラーおすすめのアイロンを使った裏ワザテクニックで簡単シワ伸ばし!
スーツを着ていてシワが目立つ、気になるという声が最も多いのが二の腕部分です。
よく動かす肘の関節があり汗をかいて湿りやすい二の腕部分は、スーツの中でも特にシワが発生しやすい部位だといえるでしょう。
そこでテーラーがおすすめの裏ワザテクニックを1つ紹介しておきます。
必要なのはアイロンがけの3点セット(アイロンと台、当て布)の他には、タオル1枚だけです。
袖の部分を膨らませるようにタオルを詰めて、軽くスチームを当てるかアイロンを滑らせるだけのお手軽テクニックですが、とても簡単に気になる二の腕部分のシワを取り除くことができます。
慣れてくると2~3分で終わるので、日々のメンテナンスにも最適でスチーマーしか無い場合でも実践できるのでおすすめです。
アイロンを使わないシワ伸ばし方法と注意点!
最後に、スーツのシワ伸ばしができるライフハックとして有名な「寝押し」についてテーラー目線から注意喚起をしておきましょう。
結論からいうと、スーツを布団やベッドの下に置いてシワを伸ばす寝押しはやめた方が良いです。
スーツの寝押しが良くない理由
- 折り目がズレてついてしまう恐れがある
- 汗や畳の水分をスーツに吸わせることになる
どうしてもアイロンがかけられない状況で、シワを伸ばしたいときはスーツに水分を与えてハンガーで吊るして自重でシワを伸ばす方法がおすすめです。
霧吹きなどがあればベストですが、使用後の浴室に2~30分だけスーツを吊るしてから陰干しをするという方法でも代用できます。
定期的なアイロンがけがスーツを美しく保つ秘訣!
スーツを着用して身体を動かせば、シワが目立ってしまうのは仕方がないことです。
しかし、シワを放置しているとスーツ本来の美しいラインが崩れるばかりではなく、臭いやカビを引き起こす原因にもなってしまうので定期的にアイロンがけを行ってメンテナンスをしましょう。
- スーツのアイロンがけのポイントは部位ごとに行うこと
- 圧力と高温スチームの両方を兼ね備えたスチームアイロンがおすすめ
- 寝押しをするくらいなら水分を与えてハンガーに吊るした方がよい
こまめにアイロンがけを行っていれば、折り目やラインが判らなくなるようなことはありませんが、長期間メンテナンスを怠っていて判断が難しいときは無理せずにクリーニング店を頼るようにしてください。
スーツクリーニングの選び方や出し方については、過去記事で詳しく解説していますので合わせて読んで頂ければ幸いです。